JSPS男女共同参画推進アドバイザーからのメッセージ
五十嵐悠紀先生

明治大学 総合数理学部 准教授
五十嵐悠紀
 先生

【研究内容】
ヒューマンコンピュータインタラクション、コンピュータグラフィックス

【研究概要】
手芸・工芸を対象としたインタラクティブ形状デザインに関する研究

【趣味・特技等】
ピアノ、テニス

子育てと研究

 私はコンピュータグラフィックスやヒューマンコンピュータインタラクションといった分野の研究者です。日本学術振興会のPD, RPDなどを経て明治大学に講師として着任したのが2015年。3人の子どもの母でもあります。ここでは、育児と研究の話をしようと思います。

 長男が生まれたのは、私が博士課程2年生のとき。ちょうど東京大学に保育園ができた年で、地域の保育園に入れなかったので学内保育園に預けることになりました。ベビーカーでキャンパスへ一緒に通学し、隣の建物の保育園に預けるという生活。片道1時間の電車通学でそれなりに大変でしたが、今となってはいい思い出です。ちなみに、身近な先輩に大学院生時代に出産育児をしながら研究をする方々がいらっしゃったのもあり、博士課程か結婚・出産かを悩むことはありませんでした。

 PDのときに2人目出産、RPDで3人目出産しましたが、その間も研究業績を積まなければいけない期間と重なります。国内開催の国際会議へ論文投稿したり、直行便で行ける大都市で開催される国際会議を選んで子連れで出向いたりしました。現地では、夫と交代で学会会場で面倒を見ながら発表したり、現地のホテルでベビーシッターに預けたり、父に付いてきてもらったり、など様々な経験をしました。2008年、つわりの辛かった私は、国内からヨーロッパの国際会議にスカイプで発表させてもらった経験もあります。

 このような中、体験として面白かったのが、2014年にテレプレゼンスロボット(遠隔操作ロボット)で参加した学会です。末娘を出産した直後に国内で学会がありました。この年は、委員長の計らいでiPadに脚がついていて遠隔操作で自由に動き回れるロボットが会場にありました。産後、退院して1週間だった私は現地参加をあきらめていたのですが、娘と一緒に自宅からロボットに接続して参加しました。それまでも、動画生中継配信や学会中のチャット推奨など、先進的な試みを行っていた学会でしたが、自分でロボットを使って現地参加した体験は、それ以前とは全く違いました。

 
遠隔操作ロボットで自宅から学会に参加。招待講演の質疑のためにマイクに並んだり、デモ発表を歩いて回ったりして現地を堪能した。

休み時間中にアイスを食べさせてもらう私

 論文発表聴講だけであれば、生中継を遠隔で聞くのでも可能です。でもテレプレゼンスロボットだと、休憩時間になったときに、みなさんが右後ろに向かって歩いていく様子も見えます。なんだろう?とついて行ってみたところ、そこにはコーヒーコーナーがありました。「こんにちは」「あれ?今回はロボットで参加しているの?」「出産おめでとう」「最近どんなことしているの?」「今度こういうことやろうと話しているんだけど、五十嵐さんも一緒に興味ない?」などなど、雑談から次の共同研究の話まで、こういった休み時間に現地でしか体験できないことが、体験できたのです。

 デモ発表の時間も自由にデモ会場を歩き回って、自分が聞きたいデモ発表を聞くことができました。Wi-Fiから外れてしまったときには、別チャネルで「すみません!動かなくなりました!」と伝えることで、現地でWi-Fiのつながるところまで運んでくださったようです。

 この体験から早6年。コロナ禍で様々な会議や授業までもがオンラインになりました。技術を使えば解決できる仕事やコミュニケーションもあれば、現地でしかできないこともあります。「できない」とあきらめるのではなく、技術を使って「できる」ことを見つけたいと思っています。

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