JSPS男女共同参画推進アドバイザーからのメッセージ
平林由希子先生

  

芝浦工業大学 大学院理工学研究科 教授
平林由希子
 先生

【研究内容】
土木工学・水工学

【研究概要】
地球温暖化による水循環変化のグローバルな推計       

ワークライフバランスを支えるシステム

 私が勤めている芝浦工業大学では、男女共同参画を積極的に進めています。常勤教員の女性比率は、約1割だった2014年から、2020年には約2倍まで増加しており、同年の工学系研究者に占める女性比率の全国値を大幅に上回っています。また、2013年度には大学の17学科のほぼ半数の8学科で女性教員が1名もいなかったのに対して、2019年度以降はすべての学科に女性教員が在籍しています。女子学生の比率も2014年の13.8%(大学院生9.5%)から2020年には18.3%(同15.8%)と着実に増加しているなど、工学系の大学としては画期的な成果を上げています。

芝浦工業大学の常勤の女性教員比率(%)の変化(大学Webページより)

 これを支える学内のサポートとしては、育児介護休業中の教育研究支援員の配置、任期付き教員を別枠で採用して授業等の対応をしてもらえる支援制度、休業後のライフイベント中の学生補助員の配置、産前産後休業の有給制度などがあり、非常に充実しています。しかし、子供が小さいうちは急な発熱による欠席やインフルエンザなどの感染症による長期欠席、学級閉鎖などへの対応が必要になることがあります。本学は規模の小さい工学系の私立大学なので、基本的には1人の教員が1つの専門を担当して研究室を運営しており、講義もゼミもその教員が欠けると代わりがいません。このような、規模の小さい大学における休業後のライフイベント中の教員の支援、特に乳幼児期の子供がいたり、福祉のサポートに繋がる前の自宅介護といった状況にある教員の支援は、今後の課題だと思います。

 現在の職場で特に素晴らしいと感じていることは、金曜日が会議の日として設定されていることです。金曜日は多くの教員のスケジュールが空いているので、様々な会議や急な打ち合わせを日中にすることができます。長年大学で教員をしていますと、早朝や夜遅く、または週末に会議をすることが当然とは言わないまでも仕方ないという考え方についついなりがちで、私もそうでしたが、夕方から始まる会議が無いことに大変驚きました。本学では家事や育児に主体的に関わっている男性の同僚も多く、男女の区別なく、バランスの取れる働き方が実現できていると思います。男女共同参画を進めるためには、個人の工夫だけでなく、システムも重要であるということがわかります。

 最後に、最近(2021年6月)の最高裁の合憲判決で話題となった、夫婦同姓に関連しまして個人的な経験をご紹介します。前職の東京大学では、申請すれば旧姓のみを記載した職員証が配布されました。霞が関での公的な会議では、建物に入るときに身分証を提示する必要があり、会議によっては委員名簿との照合があります。旧姓で活動しているため、委員名簿も旧姓しか載っていませんが、大学名と職名と旧姓が書いてある東京大学の職員証を見せればすぐに入館することができたので、大変便利でした。
 現職の職員証は、戸籍名のみの記載で旧姓の併記も認められていないため、官公庁の会議の際には、名刺と会議開催のお知らせをすぐに見せられるように準備しています。入試やオープンキャンパスなどでは職員証を首から下げるのですが、独自の名札を作るなど工夫しています。現在の職場では、システムの変更にお金がかかるという課題もありますが、関連部署には前向きにご検討いただいているところです(※)。

 皆様の組織でも、通称名での研究活動をご支援いただく際には、ぜひ、身分証についても併せてお考えいただけると嬉しいです。結婚後に姓を変えた方だけが、改姓の事実や戸籍上の姓といった私的な情報を示す必要はないので、個人的には併記ではなく通称名のみの身分証の方がありがたいです。

※ 2022年1月より職員証の旧姓使用ができるようになりました。

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