変化の時代を生き抜く「適応力」と「自分軸」の磨き方
秋田 夏実 様
(株式会社 みずほフィナンシャルグループ 執行役常務 グループCCuO 兼 グループCBO)

株式会社 みずほフィナンシャルグループ
執行役常務 グループCCuO 兼 グループCBO
秋田 夏実 様

長年グローバル企業(金融・IT分野)でマーケティングやPRを軸にキャリアを重ね、気付けば30年以上の月日が経ちました。大学卒業後は、日本企業で総合職として働き始め、途中で経営大学院に私費留学し、複数の企業で経験を積みました。一見順調なキャリアに見えるかもしれませんが、振り返ってみると、これまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。外資系企業の部門売却や、日本のビジネスの閉鎖、プライベートでは夫の海外赴任や、3人の子供の妊娠・出産、自身の治療、親の介護など、本当に様々なことがありました。今にして思えば、その中で一貫して意識してきたのは、「Adaptability(アダプタビリティ)」と「Identity(アイデンティティ)」だったのではないかと思います。言い換えれば、自分を取り巻く環境や周囲の期待の変化に柔軟に適応する力と、その変化の中で、自分だからこそ提供し得る価値を追求し続ける姿勢が大事だったと感じています。

この十年、コロナ禍や技術革新、価値観の多様化などを背景に、我々の働き方は大きく変化しました。かつて日本企業で総合職として働く女性はごく少数で、ロールモデルも殆ど存在せず、女性たちが自分のキャリアの未来を描きにくい時代でした。当時と比較すれば、働く環境や制度は大きく変化しましたし、多くの女性が年齢を問わず自分らしいキャリアを模索できる時代になってきたと思います。しかし、新たな役割や責任を引き受けるか否かという判断を求められる場面が訪れた時、特に女性の場合は、ライフイベントとの兼ね合いで慎重になり、挑戦を躊躇うことも多いのではないでしょうか。私自身もそうした葛藤を何度も経験してきました。それらを越えて思うのは、長い人生を俯瞰してみると、コンフォートゾーンに留まることは、必ずしも最適な選択ではないということです。

重要なのは、変化の中で自らの強みや専門性をどう活かし、どのような価値を新たに創出していくのかを主体的に考えることだと思います。前述したアダプタビリティとは、単に環境に順応することではなく、変化を前提に学び続け、自身の行動や役割を更新していく力です。そして、その土台となるのがアイデンティティであり、これは固定的な属性ではなく、経験や判断の積み重ねによって形成されます。自分のキャリアの「タグ」を増やし、自分ならではの視点や貢献の形を意識的に磨いていくことが、変化の時代におけるキャリア形成には不可欠です。そのためには、常に自分をアップデートし、学び続ける姿勢が求められます。

今いる場所から飛び出して、新たな挑戦をしようとすれば、責任や負荷が増す場合もあるでしょう。しかしその一方で、視座が高まり、自組織や社会に対してより大きな影響を与えることや、重要な意思決定に関わることも可能になります。自らの経験や価値観を活かし、多様な人材が力を発揮できる環境を整え、次の世代の挑戦を後押しすることは、キャリアを重ねてきた立場だからこそ果たせる重要な役割であると感じています。

ライフイベントとキャリアの関係については、「両立」という言葉に囚われ過ぎる必要はないと思います。人生の各段階において、仕事と私生活の比重が変化するのは自然な流れです。その変化を前向きに受け止め、状況に応じて働き方や関わり方を調整し、周囲に助けを求めながら、長期的にキャリアを継続していく姿勢が大切です。そのためには、制度や支援策を適切に活用し、自身の可能性を狭めない選択を重ねていく意識も欠かせません。私自身も時に悩み、考えながら、現在進行形で二男一女の子育てや親の介護に向き合い、仕事を続けています。

キャリアに唯一の正解はありません。選択を誤ったと感じる瞬間があっても構わないと思います。人生においては、やった後悔より、やらなかった後悔のほうが大きいものです。生きている限り、何度でもやり直しはできるのですから、挑戦する心を持ち続けて欲しいと思います。変化を前提としたアダプタビリティと、自分自身のアイデンティティを主体的に形成し続ける意識を持つことで、キャリアはより持続可能でワクワクするものとなります。本稿が、キャリア形成に向き合う方々にとって、自分ならではの価値を見つめ、育てていくための一助となれば幸いです。

JSPS男女共同参画推進アドバイザー一覧へ戻る