JSPS男女共同参画推進アドバイザーからのメッセージ
上田貴子先生
早稲田大学 政治経済学術院 教授 上田貴子 先生
【研究内容】 経済学
【研究概要】 女性、貧困等の実証研究
【一言】 愛護団体出身の犬2匹がいます
女性研究者支援活動から学んだこと
私の専門である経済学分野では、女性研究者による若手女性支援活動が世界各国で行われるようになってきています。私も日本での支援グループに参加、アメリカ経済学会で行われている若手女性を対象としたメンタリング・ワークショップを訪問する機会を得たことがあります。2日間にわたるセッションで、論文公刊、研究費の獲得、テニュア取得、研究者ネットワーク、教育、ワーク・ライフ・バランス等をテーマとして、先輩女性が若手女性にアドバイスします。その他にも、様々な国際学会で女性研究者支援のセッションが設けられるとともに、招待講演者に女性を含めるようになってきています。日本でも日本経済学会で若手・女性支援セッションを設けるとともに、代議員や理事に女性が増え、2021年からは女性研究者奨励賞も創設されたところです。
支援活動の過程で、SNSの利用方法や効率的な時間の使い方、レフェリー・レポート、共同研究など、私自身も大いに学ぶところがありました。また、様々な体験談を応用して、それまで漫然とこなしていたところのある各種業務を、目的と必要性を見定めて意識的に業務時間を短縮できるようにもなったと思います。
海外の女性研究者にとってもワーク・ライフ・バランスは大きな問題ではありますが、シニア女性の経験談では‟throw your money”、つまり「お金で解決する」につきていたように思います。海外では家政婦や子守りを雇っている研究者家庭は多いようです。小学生の子どものいる日本人女性が「子どもがまだ小さいので」と出張などを躊躇する一方、「もう子どもは大きいから大丈夫」と言う米国女性の子どもがまだ3歳と聞いた時は彼我の差を感じました。社会や文化が違う、と思われるかもしれませんが、査読付き国際誌では国も男女の別もなく同じ土俵で研究成果を争います。1日24時間という時間資源は誰にとっても共通です。研究時間はもちろん、新しい研究の発想を得るための活動や、家族・友人との時間、リフレッシュのための自分の時間などのためにも、業務や家事の効率化は重要だと思います。また、支援活動の中で ‟Women Don’t Ask”という本を紹介されたことがありますが、米国でも女性は男性よりも必要なもの、望むものを交渉しない傾向にあるとのことです。積極的に声をあげること、戦略的に交渉することも時には必要です。皆様が充実した研究生活を送れるように願っております。
(本文中の書籍)“Women Don’t Ask: The High Cost of Avoiding Negotiation–and Positive Strategies for Change” Linda Babcock and Sara Laschever, 2007