JSPS男女共同参画推進アドバイザーからのメッセージ
佐野幸恵先生

筑波大学 システム情報系 社会工学域 助教
佐野幸恵
 先生

【研究内容】
社会経済物理、ネットワーク科学、計算社会科学

【研究概要】
SNSにおける情報拡散ネットワーク分析などウェブに関する研究

【一言】
最近は息子(5歳)の影響で、航空機の観察にはまっています。

私の運命の人

 日本一敷地面積が狭い国立大学、と言われる奈良女子大学の入学式では新入生全員が講堂に集まり、一人一人名前を呼ばれます。1997年4月、アイウエオ順に並んだ講堂で、「サノ」(私)の隣には「シモムラ」が着席していました。愛媛出身の私はすごく丁寧に「はじまして、佐野です。よろしくお願いします。きれいな髪ですね。」と声をかけたように思います。それに対して関西出身の彼女は「ああこれな、ストパーやねん。」と、いきなりタメ口・関西弁で答えられ、びっくりしたのをよく覚えています。これが私の運命の人、下村真弥さん(現 奈良女子大学 助教)との出会いです。

 私は、幼い頃から物理や数学の世界観が好きな割には、理系科目がさほど得意ではなく、国語や英語などの科目で点数を稼いで、それを理系科目で相殺することで、高校の理系クラスで生き延びていました。奈良女子大学の物理科学科へも、その年に初めて実施されたAO入試(だったと思います。センター試験の結果と小論文を提出しました。)のおかげで、なんとか入口に立つことができました。そして、その物理科学科の同級生として、下村さんがいました。下村さんは私とは逆で、英語は苦手、物理や数学が得意な学生でした。

2000年度 奈良女子大学 理学部 物理科学科卒業アルバムより
(この卒業アルバムの企画・撮影などは私が提案して行いました。)

 あまり共通点はなかったのですが、私が入部したアイススケート部に、なぜか「うちもやるわ」と言って、下村さんも入部してきた頃から、急に仲良くなりました。その後、彼女は、筑波大学大学院へ進学し、私は一般企業へ就職し、住む場所も環境もばらばらになりながらも、なんとなく交流が続いていました。そして会社員になった私は、お互いの近況を話すうちに当時ポスドクだった彼女がアメリカのBNL*1などに行く話を聞いて、心底うらやましいと思うようになりました。そして、とうとう退職し、東京工業大学大学院の博士後期課程へと入学し現在に至ります。
 と、書いてしまうと割と何の変哲も無いような話に聞こえるかもしれません。しかし、実は「なんとなく交流が続いていた」というのがポイントで、家族でもない友人とは環境が変わると交流が途絶えることが多い中、彼女とは交流が続いていて、刺激を受け続けていました。今もまさに、そういう関係です。気の合う友人というのは、そういうものではないかと思います。

2015年 下村さんが第二子を産んだ時に病院にて

 例えば、私たちの所属する日本物理学会に目を向けてみると学生女子比率は24%、一般会員女性比率は6%*2です。そのような環境で、多感な若い時代に性別を超えた友人関係を構築することは、現実的にはまだ難しいと思われます。また、「女子同士だから」といって半ば無理やり友人になったとしても、それはあまり長く続かないでしょう。私はたまたま女子大に進学して、物理を学ぶ同性の同級生が40人いた中で、たまたま気の 合う友人がいました。そしてその友人が導いてくれたことで、今に至っています。

 志は高いに越したことはないのですが、むしろ普通の女子学生が、理系を含む好きな分野をバイアスなく選んで、普通に気の合う友人を見つけて、のびのび学生生活を送る、そういう世界が早く実現すれば良いのに、と思います。そして、その結果として研究を志す女子学生も増えるのではないでしょうか。そのためにも、まずは母数を増やすことが大切だと考えています。

2018年 居酒屋にて (下村さんはお酒が飲めませんが、付き合ってくれます。)

(*1)BNL: Brookhaven National Laboratory大型加速器があるアメリカの国立研究所。世界中から研究者が集まっている。
(*2)出典「連絡会加盟学協会における女性比率に関する調査」(2019年・男女共同参画学協会連絡会)」(2021-09-01参照)

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