エジプト人研究者の男女参画
深見 奈緒子(日本学術振興会カイロ研究連絡センター センター長)
無論例外はあるけれど、20代前半に結婚し、複数の子供を持つことが、エジプトの一般常識である。とはいえ、A女史は「研究者として結婚をしないという選択もある」と話す。キャリアパスのためには、因習に囚われて新たな家族を作っていくよりも、自身の研究を推進する人生を選択することもできるわけだ。一方で、男性研究者側からは、若い女性研究者は妊娠、出産を繰り返し、大学教員としての戦力にならないという愚痴もこぼれる。イスラーム教徒は男女の区別が明確で、彼らが大半を占めるエジプトにおいては、ジェンダーの壁は高いといえよう。
とはいえエジプトでは、日本よりも女性研究者が目立ち、特に理系分野に女性の活躍が著しい。彼女たちは家庭、子育てをどうこなしているのだろう。研究者同士のエジプト人夫妻で日本にともに滞在したB女史は、「夫婦の助けあいが必要、家に帰ったら、研究室のことは忘れる、切り替えが大事」と語る。夫のC氏は、「日本人を信頼しているので、妻が他の男性と一緒にシンポジウムに参加することになんら躊躇はない」という。研究者同士の夫婦でなくとも、やはり研究と子育ての両立について、伴侶の協力は欠かせない。加えて、近くに住む大家族からの援助、あるいは日本滞在時のエジプト人コミュニティなど、多様な人間関係が彼女たちの活躍を支えている。