海外での挑戦を、次のつながりへ

松山 聡子 (Cincinnati Children’s Hospital Medical Center, Reproductive Sciences Center, Division of Developmental Biology, Associate Staff Scientist)


 私は小児泌尿器科医として日本で約10年間臨床に携わった後、2021年に単身で米国シンシナティへ留学しました。臨床を続ける中で現在の医療の限界を感じ、疾患のメカニズムを解明し、新たな治療へとつなげたいと思うようになり、渡米を機に基礎研究を始めました。2023~2024年には、日本学術振興会の海外特別研究員としてご支援いただきました。現在はCincinnati Children’s Hospital Medical Centerで、胎児期の精巣や卵巣の発生、生殖機能がどのように形づくられるのかを、免疫細胞に注目して研究しています。

 基礎研究は初めてで、当初は前提となる知識も十分ではなく、研究内容も英語も分からない、というような状況でした。本当に辛い時期もありましたが、そんな時に、シンシナティの日本人研究者コミュニティであるUC TomorrowやUnited Japanese Researchers Around the World(UJA)の方々に本当に助けていただき、周囲に支えられながら研究を進めることができました。

 また、留学後にはシンシナティで夫と出会い、結婚しました。夫はもともと日本でITエンジニアとして働いていましたが、結婚を機に新たなキャリアに挑戦し、現在はUniversity of CincinnatiのComputer ScienceでPhD studentとして研究しています。その後、米国で娘を出産し、今は夫婦ともに研究を続けながら子育てをしています。

 海外で研究・生活する中では、キャリア、ビザ、家族、子育てなど、研究以外にもさまざまな選択に直面します。私自身、多くの方との出会いや支えによって、新しい道を選びながら歩んできました。そして、人とのつながりが新しい挑戦を生み出す力になることを実感しています。

 現在、私はUJAの代表として、海外で活動する日本人研究者をつなぐコミュニティ運営にも携わっています。UJAは現在、9か国70の地域コミュニティ、約6,000人の研究者・留学生につながるネットワークへと広がっています。研究者同士の相互支援に加え、世界各地の研究者コミュニティと日本の教育・科学技術行政機関をつなぐ「ハブ」としての役割も大切にしています。

 また、若手、女性、地域や研究分野の異なる方々など、一人ひとりが自らの強みを活かし、主体的に活躍できる機会をつくることも、UJAで大切にしていることの一つです。

 UJAでは、自分の経験を次の人に伝えたり、異なる分野の人と出会ったり、新しい企画に関わったりすることを通じて、自分自身の次の研究やキャリアにつながることもあります。

 たとえ住む国や地域が異なっても、研究者がつながり、支え合い、共に学ぶことができる。そうした一人ひとりのつながりが新しい挑戦を生み、日本と世界を結ぶ国際頭脳循環を育てる基盤になると考えています。

 これから海外へ出る方も、すでに海外で研究している方も、ぜひUJAというつながりを活用していただけたら、とても嬉しく思います。そして皆さん自身も、それぞれの経験や個性を持ち寄り、新しい「主人公」として、一緒に次の研究環境をつくっていっていただけたら嬉しいです。