専門分野と国境を越えて―米国で見つけた私なりの研究スタイル
小泉 和(ジョージ・メイソン大学 Schar政策・政府学部 公共政策学教授/研究・助成担当副学部長)
私が米国で研究を続ける中で感じるのは、面白い研究テーマは、しばしば専門分野と専門分野の「間」にあるということです。私自身、移植医療、医療政策、生命倫理、データ・モデル分析、人工知能など、異なる分野の研究者や臨床医と共同研究を進めてきました。すべてを一人で理解しようとするのではなく、それぞれ異なる視点や専門知識を持つ人と話しながら、一つの問題を多面的に考える。これが私なりのアプローチです。研究室や机の前だけでなく、人との出会いや何気ない会話、授業中の学生からの質問、日々の生活の中から研究のアイデアが生まれることも少なくありません。そして、いったん研究課題が設定され、研究が軌道に乗ったら、自分の専門外の細かな部分は共同研究者を信頼しておまかせする。そんな研究スタイルが、いつの間にか自分にとって自然なものになりました。
また、日本と米国を行き来する視点を持つことで、一つの国では当たり前に見える制度や考え方も、実はそうではないことに気づかされます。例えば医療の意思決定では、米国では患者本人の自己決定が強く重視される一方、日本では家族との相談や周囲との関係も重要な役割を果たします。どちらが正しいということではなく、異なる社会から同じ問題を見ることで、それまで意識していなかった前提が見えてくることがあります。米国から日本を見る、日本から米国を見るという二つの視点を持つことで、制度の背景にある価値観そのものを考えるようになりました。この視点の切り替えを、かれこれ35年続けてきたことは、アメリカという多様性の極めて高い社会をより深く理解する上でも役立っているように感じます。
忙しくなった時には、少し外を歩くようにしています。あえて仕事以外のことに意識を向けて歩いているうちに、まとまらなかった考えが整理されることも不思議とあります。昨年、長年慣れ親しんだ大学での研究生活を離れ、アメリカ政府へ出向したことで、改めて感じたことの一つが、「研究の仕事には終わりがない」ということでした。だからこそ、研究と生活をきれいに切り分けるというより、自分なりに長く続けられるリズムをつくることが大切なのだと改めて実感しました。研究には終わりがないからこそ、研究以外の時間も楽しみながら、研究と長く付き合っていく。それが今の私にとってのワークライフバランスです。
