ライフイベントってなんですか?
ライフイベントって何ですか?日本を離れて18年なのでそんな概念は知りません。
研究が好きで、留学したい方、海外でポスドク経験を積みたい方、あるいは海外で就職したい方にかける言葉はいくらでもあります。それがままならない「personal reasons」があるのなら、多様なサポートが(欧米では)研究所や政府から用意されているので、大手を振って受ければいいだけのこと。ただしその国に直接雇用されている場合のみで、海外学振の場合は学振側に提供してもらう必要があるでしょう。
おそらく最も難しいのは、パートナーと一緒に住めること。双方が仕事を持っているのが前提で、二人とも望む条件の雇用に就ける可能性はとても低い、これを「two body problem」といいます。子供がいる場合、前パートナーとの子供がいる場合など、多体問題にもなります。近年は、この問題を解決するため、大学・研究所が二人とも同時に採用する場合も増えてきました。その優秀な人材が他に引き抜かれにくくなるという採用側のメリットもあります。
最後に、長年、多数の人事に関わってきた者として、海外でのジョブの取り方についてアドバイスを。ちなみに海外では、人事委員会に最低2割、通常4割を女性が占めるのが常識、多くの研究機関のルールとなっていて、「産休取るつもりですか?」などという質問も絶対NG。まず、ポスドク・常勤職を得るのに最も重要なのは、論文数と引用数です。国にこもって書いているだけではダメ、人に読まれ引用されてなんぼです。次に研究会・セミナーでの招待講演、研究会の組織(LOC/SOC)、競争資金の獲得歴や表彰なども評価されます。その上での研究計画です。加えて、推薦書の内容もとても重要。日本では指導教官が学生本人に下書きをさせることもあるようですが、もってのほか。学生を次の職につかせるのも指導教官の大事な仕事の一つです。それらが認められると面接に呼ばれます。面接こそ腕の見せ所、逆転のチャンスあり、自分の研究の価値、スキル、視野の広さ、コミュニケーション能力を的確にアピールしてください。短いプレゼンを求められることも、質疑だけのこともありますが、面接時間の全てが評価されています。そうしてオファーがきて、アクセプトした後に「実は明日から産休なんです」と言ってもOK、採用側としては「!」とは思うでしょうが、その選択にケチをつけることなど許されません。私は、「研究とライフイベントの両立」だけでなく、多様な選択をするすべての研究者を応援します。
ハートフォードシャー大学 宇宙物理研究センター 准教授 小林千晶(2021年4月)